注射療法
注射療法

整形外科の診療において、注射療法は保存的治療の中でも重要な選択肢のひとつです。薬物療法やリハビリテーションと並び、外来で実施できる低侵襲な治療手段として広く行われています。注射は炎症を抑え、疼痛を軽減し、場合によっては組織修復を促進する働きを持ち、適切に施行することで患者さんの日常生活の質(QOL)の改善に直結します。
注射と聞くと「痛いのではないか」と不安を抱かれる方は少なくありません。当院では、穿刺時の疼痛を最小限に抑えるために25G(必要に応じて23G)の細い針を採用しています。一般的な採血や点滴で用いられる21G針と比較すると細いため、皮膚や軟部組織への侵襲が軽減されます。特に関節内注射や腱鞘内注射のように繰り返し処置を必要とする治療においては、細い針の使用が患者さんの負担を軽減する上で重要です。
適応
変形性膝関節症、外傷後関節炎など
薬剤
ヒアルロン酸製剤、ステロイド製剤
作用機序
注意点
ヒアルロン酸は比較的安全ですが、効果を得るためには週1回を数回継続する必要があります。ステロイドは短期的に強い効果を発揮する一方で、反復使用により感染リスクや軟骨障害の懸念があるため慎重な適応判断が必要です。
適応
ばね指、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)、手根管症候群など
作用機序
炎症部位に直接薬剤を注入することで、腱鞘の肥厚や炎症を抑制し、腱と腱鞘の摩擦を軽減します。これにより腱の滑走性が改善され、疼痛が和らぎます。
効果
1回の注射で改善する例もありますが、場合によっては複数回の投与が必要になることもあります。外科的治療が必要となる前段階で有効性を発揮する治療です。
適応
筋筋膜性疼痛症候群、慢性腰痛、頸部痛、肩こりなど
作用機序
筋肉の硬結(トリガーポイント)に局所麻酔薬を注入し、異常に興奮している神経筋接合部の活動を遮断します。これにより筋の過緊張が解除され、血流が改善、疼痛が軽減します。薬剤の効果に加え、針刺激そのものによる鎮痛作用
(needling effect)も得られると報告されています。
ハイドロリリース
局所麻酔薬に生理食塩水を併用して、筋膜間の癒着を剥離することで疼痛を改善します。
適応
骨粗鬆症、関節リウマチなどの慢性疾患
作用機序
骨形成促進作用や骨吸収抑制作用を通じて骨代謝を正常化し、骨密度の改善と骨折リスクの低減に寄与します。
適応
坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、慢性腰痛など
作用機序
神経周囲に局所麻酔薬を投与することで、一時的に痛みの伝達を遮断します。これにより疼痛の軽減に加え、交感神経抑制による血流改善も期待できます。当院では現在導入準備中で、安全管理体制を整え次第ご案内いたします。
当院では25Gなどの細い針を使用しており、採血で使う一般的な針よりも細いため痛みは軽減されます。必要に応じて局所麻酔も使用し、患者さんの負担を最小限に抑えます。
病態や治療薬によって異なります。ヒアルロン酸は週1回を数回行うことが多く、ステロイドは必要時のみです。骨粗鬆症薬は月1回、半年に1回、年1回といった定期投与になります。
ステロイド注射は感染や軟骨障害のリスクがあり、骨粗鬆症薬では腎機能やまれに顎骨壊死に注意が必要です。当院では適応を慎重に判断し、十分な説明と同意の上で投与を行います。
トリガーポイント注射やステロイド注射は即効性が期待できます。一方、ヒアルロン酸や骨粗鬆症治療薬は効果が安定するまで継続投与が必要です。
注射療法は整形外科における保存的治療の中でも即効性が高く、関節・腱・筋肉・神経など多様な部位に適応できる治療です。患者さん一人ひとりに合わせた最適な医療を実現し、安心して治療を受けていただける環境づくりに努めています。
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